午前0時のシンデレラ
1.午前0時


午前0時になる、少し前。


あたしは静かに寝室を抜け出し、薄手のガウンを羽織る。



音を立てないように注意して窓を開けると、ひんやりとした風が頬を撫でる。


「…さむ」


ぽつりと零した声と、白い息が混ざり合う。


窓枠に手をかけると、あたしは近くの木に飛び移った。



枯れかけているその木は、僅かに軋んだ音を立てた。


あたしはその木の枝に立ったまま、耳を澄ます。


「…よし」


辺りは静まり返っていて、誰かがいる気配はない。


あたしは木の枝から、近くの塀を一気に飛び越えた。



高さ2メートルはある塀を飛び越え、あたしは難なく着地した。


顔を上げると同時に、瞳に映る満月と…人影?



「―――聞いてた通り、やんちゃなお嬢様だ」



逆光で顔は見えなくても、はっきりとわかった。


その人物は…笑っていた。





午前0時を告げる鐘の音が、静かに響き渡った―――…





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