隣の先輩
第10章 好きな人
 五月も終わりに近づいてくると、クラス内の人の顔と名前も完全に一致するようになっていた。


 仲良くする人も固定化されてくる。


 女の子で話をするのは専ら愛理と咲。男の子だと森谷君だ。


 学校に到着し、上靴に履き替えようと靴箱に手を伸ばしたとき、背後から声をかけられた。


 振り返ると、同じクラスの井田洋平が立っていた。


 運動ができて、そこそこ目立つ感じの子だとは思う。人見知りをしないのか、彼は誰とでも話をするタイプだ。



 挨拶をした私を、何かを言いたそうな目で見ていた。


 その仕草は目新しいものではなく、彼が何を聞こうとしているのかすぐに分かった。


 でも、口に出してはいけない気がして、彼の言葉を待っていた。


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