ワタシ
どん底Days


運よく、始業式の日は、職員会議が長引いたため、本鈴で先生が現れることはなく、ワタシは遅刻を免れた。


今年の遅刻は許されない。

なぜなら当然の如く、受験に大きく影響してくるからだ。


そう考えれば遅刻にならなかったのは嬉しいことである。



しかし、冗談じゃない。

顔見知りはいるものの、誰ひとりとして仲良しがいないのだ。


同じ小学校だった人もちらちらいたが、合わないという私的な理由で話し掛けようとも思わなかった。


本物に越したものはないという、中学生になってからの数少ない経験上の知恵だ。


合わせるという行為が自分を1番縛り付ける行為であるとなんとなく悟っていた。


まぁ、時には合わせることも大事だけどね。


それにしても、どうしよう。

さすがに3年生にもなると、友達というものが個人個人で確立されてくる。


むろん、滑り込みは論外。


始業式の次の日のワタシは、前日の明るい気分は消え去り、どん底であった。


《あ~もう!!最後の年に限って何さぁ!!》


机いっぱいに伏せ、心は嘆くばかり…


しかし突然、ワタシの肩をポンポンするものに気づき、ふと顔をあげる。

そこに立っていたのは、一人の女の子。

「あ…」


ワタシはその子を知っていた。


そして、少しずつ思い出される、2年の2学期…―



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