なんでも屋 神…第一幕
第十二章
確率は2分の1…天国へ行けるのか、地獄へ行けるのかは分からない。それとも、再び現世で生き地獄を味わう事になるのか…。


爪先から震え出す全身の筋肉。奥歯をいくら噛みしめても、その震えは止まない。



コルトが鉄の塊のように重く感じる。迫り来る死に怯えながらも、それを望んでいる自分…恐怖と希望…その極地に立たされ、今開かれる凶人の扉。



グリップを握り直し、震えの止んだ親指でハンマーを起こす。



全身の毛穴から流れ出ていた汗は止まり、この状況が楽しくて仕方無い。



冷ややかな視線を送る兄ぃに返す余裕の笑み。その状況を把握出来ない相馬は、徐々に苛つきだした。



「さっさと引き金引け!」



その安い挑発が、俺の心に宿る真美に対する罪悪感の引き金を引く。



緊張が迸る工場内で、徐々に力を込めていく人差し指。



漆黒の微笑みを投げ掛けてくる銃口…皮膚の下を駆け巡る熱くたぎる血。
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