マッタリ=1ダース【1p集】

第6話、ベルトの意味

「ナニあれ。制服に黄色いベルトやで。あたしには何を訴えたいんか、わからへん」

 ミオはミニスカートのようになった制服姿のまま、友達のナオミの横で足を組んで言った。

 通っている高校から帰る電車の中、ミオとナオミは、ホームの階段を降りてくる同じ高校の男子、ユキを指していた。
 ユキは勉強もスポーツも得意で、学校の女子に絶大な人気があった。
 今日もユキは同じクラスの彼女を連れて、ミオたちのいる隣の車両に乗り込んだ。

「なんであんな黄色いベルトを制服に着けてるのよ」

 ミオがまた毒付く。

「だから似合わないって」

 今度は独り言のように呟いた。

「何やってもサマになるからねぇ。似合う似合わないは、本人次第ってところじゃない」

 睫毛をいじっているナオミが、知ったような口をきく。

「何よ」

 ミオはぷいっと、ナオミにソッポを向いた。


 そんな時、いかにも頭の悪そうな二人組のオトコが現れた。見たところ、駅一つ離れた別の学校の男子のようだった。
 オトコ達は吊革に体重を掛けて、ミオとナオミに向かって前のめりになった。

「なあ、ヒマやろ? 俺たちと遊ばへん?」

 ミオはうっとおしかった。それに、すこぶる機嫌が悪い。

「悪いけど、どっか行ってよ」

「あンだって? ナメとんのか」

 一気に雰囲気が悪くなったところで、ミオはトドメの一言を放つ。

「あたし、アタマ悪そうな男、大嫌いなのよ」


 それからどうなったか?

 ユキが隣の車両からやって来て、わめく二人と話を付けた。

 ミオとナオミは、助けてくれたユキにお礼を言った。
 その時ナオミが汐らしい少女のようだったので、ミオは吹き出しそうになった。


「あんまりオトコを刺激すんなよ」

 ユキは二人に言った。

「ねぇ…ユキ、アンタはあんまり女子を悩ませないでよね」

 ミオがそう釘を刺すと、ナオミの目が真ん丸くなった。


「アンタにあげたその黄色いベルト、意味分かって制服に着けてんの?」

 ミオはまだ言っている。

「ミオは覚えてないのか。オマエから貰った時、大切にするって言ったろ?」

 そうユキに返されて、思わずミオも汐らしくなってしまった。


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