71

初めてのバレンタイン





小学校5年生のバレンタイン。



勇気を出して、涼くんの家へ。





鳴らしました、チャイムを。



・・・・・・ピンポーン





初めてでした。



あなたも覚えていますか――






震えるようなあのドキドキ。




何も話せないまま、チョコだけ渡して走って家に帰った。





顔が熱くて、手の震えがなかなか止まらなかった。






そして、ホワイトデー。




友達に冷やかされながら私の家の前に現れた涼くんは、真っ赤な顔で鼻を触っていた。




大好きな仕草。




「これ・・・・・・」





そう言って、赤いチェックの包装紙に包まれたビンに入ったクッキーをくれたんだ。





それから、


一日一枚ずつ、そのクッキーを食べた。






忘れもしないココア味。





1ヶ月以上もなくなることのなかったクッキー。





最後の一枚をずっと食べることができなかった。





そのビンは




今でもまだ捨てられない。








小学校5年生は、子供じゃないんだよ。





しっかり相手を見る目や、『好き』って気持ちを持ってる。







あのクッキーの味を忘れることは永遠にない。










< 12 / 71 >

この作品をシェア

pagetop