恋時雨~恋、ときどき、涙~

夕立

肌を撫でる風はまだ夏なのに、美岬海岸は初秋の雰囲気が漂っていた。


穏やかな、波。


白く輝いていた太陽が、照れた人間の頬のように紅葉し、沈み始める。


空を流れる雲は雪だるまのような形をしていて、水平線からわきあがっているように見えた。


向こうの波打ち際に近い砂浜で、何組かバーベキューをしているようだ。


こうばしい香りが漂ってくる。


海の水面に、夕陽が細かくプリズムして眩しい。


さっき買ったストラップを渡そうとした時、健ちゃんがドアを開けて車を飛び出した。


「夕陽、もっと近くで見よう」


わたしはストラップをワンピースのポケットに忍ばせて、車を降りた。


潮風が、健ちゃんの耳に光るピアスを揺らしている。


水平線の向こうで、巨大な積乱雲が朱色に染まっていた。


波打ち際を並んで歩くと、2人の影が長く伸びる。


白い波が、わたしの足元に打ち付ける。


透き通った水だ。


細かい砂と、海水が、わたしの足を優しく撫でる。


健ちゃんが、わたしの肩を叩いた。




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