きみとベッドで【完結】

◆星霜‥‥side ANDO

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あれか。


シキにあの黒いドレスを与えた男は。



確かステージでドラムを叩いていた。


銀縁のメガネに、黒いハンチングを目深にかぶった、長髪の男。


見るからにあやしい。



その男が、俺の目の前でシキにバラの花束を渡し、


まるでキスをするように


彼女の小さな耳元で、なにかを囁いた。



男は俺をちらりと見て、薄笑いを浮かべながら店に戻っていく。




完全に挑発された。




「シキ」



階下を見たまま固まっているシキの肩をつかむ。


彼女は少し、不機嫌そうな顔をしていた。



「なにを言われた?」


「……別に」



重そうな花束を抱いて、シキが歩き出す。

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