ジュリエットに愛の花束を。

テレパシー



……っていうか!

なに、あの態度っ!

なんで家に樹をあげるのにお兄ちゃんの許可が必要なの?

自分はもう家を出たくせに!

第一、この家の所有者はお父さんなのにっ!!


『……まぁ、お兄さんなりに考えがあるんじゃねぇ? 

つぅか俺、「お兄さん」とか呼んでて大丈夫? 次会った時刺されたりしない?』


樹は、怒り心頭のあたしとは打って変わって落ちついた声で話す。

いつもは一緒にいるのに……、慣れない電話越しの声は、恥ずかしい感じがする。


「樹……なんか落ち着いてるね」


部屋の窓から外を眺めながら、気持ちを落ち着かせる。

電話越しの樹を意識した途端、不思議とお兄ちゃんへの怒りは小さくしぼんでいて。

……自分の樹への気持ちの大きさが、勝手に計られちゃったみたいでなんか悔しい。


秋から冬に変わろうとしている空は、もうすっかり暗闇に包まれて星が見えていた。





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