キミは聞こえる

二章-4

「あれ、代谷と栗原じゃん。どうしたよ、こんな時間に」

 出てきたのは桐野だった。

 寝間着なのだろうか、練習着のようなツルツル素材のハーフパンツで現れた桐野に腕がぞわっと粟を噴いた。

 寒い。あり得ない。長いの履け。風邪引くぞ! おもわずそう突っ込みたくなった。

「聞きたいんだけど―――」
「つーか代谷、おまえデコ出してるほうがずっといいぜ。なんかおさね~」

 いきなり桐野の手が泉の視界を覆った。

 被さっているものが何もないまっさらな額を、桐野は子供の頭を撫でるようにぐりぐり触った。

 脱線するなアホ。

 しかもいろいろと触れて欲しくない部分にまっさきに注目してくれやがってこのマイペースが。

 泉は桐野の手をたたき落として―――否、優しく振りはらって、こほんと咳払いをした。


「この部屋に千紗の財布が落ちてなかった?」

「ぴ、ピンクで、リボンが、ついてて、き、きらきらした財布」

 途切れ途切れに佳乃が財布の見た目を説明する。

 さすがに男子たちの前では泉に話しかけるときのようにはいかないらしい。

 まあ、そういうところは乙女らしさというか、可愛げがあるということだろう、そのしゃべりかたでも我慢できる。

「財布なんてあったかー?」

 肩越しに振り返り、桐野が残りの班員に尋ねる。

 彼らは互いの顔を見合わせてから「見てねーよ」と声を揃えて答えた。

 ―――探せよおまえら。

 人を見るんじゃなくて机の下とか椅子の裏とか見ろよ。

 そう言ってやりたいのをなんとか堪えて、泉は小さく息を吐いた。
 
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