狐面の主人














「……………ぅ…。」



あまりの眩さに、反射的に目を瞑っていた五穂が、静けさを感じ、ゆっくりと目を開けた。


そこには、



「……………え?」




先程まであった筈の、広い立派な座敷ではなく、古び廃れた、巨大な神宮があった。

五穂はすぐに、此処が屋敷の真の姿だということに気付いた。


炎尾の…もしくは妖狐の妖術によって、立派な美しい屋敷に見えていただけなのだ、ということに。




「…………炎尾様…?」


見渡した五穂の目に、真っ先に飛び込んできたのは、


「ッッ!!?」


一面の、狐の死骸だった。



屋敷で働いていた、あの沢山の雄狐の手伝い達。

狐の仮面の代わりに、皆本当の姿となっていた。
…だが、二度と、その目を開くことは無い…。




何故、自分は何とも無いのだろうか。


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