Love Step

苦手

私の事がとりあえず一件落着して、ママと春樹おじさんは一緒の日に渡米する事になったの。



ママたちはワシントンへ行く前にやる事がたくさんあって、私の荷物をゆきちゃんのマンションへ移したのはママたちが渡米する前日だった。



ゆきちゃんは仕事で忙しいから、マンションの鍵を借りてママと2人で引越し作業。





「やっと片付いたわね これで明日からここでちゃんと住めるわ」


ママは少し寂しそうに笑って言った。


私を連れて行きたいのは分かる。


母1人、子1人でずっと一緒だったから。


けど……ママ、ごめんね 私はゆきちゃんの傍にいたい。



「……ごめんね ママ」


「何言ってるのよ 杏梨に邪魔されずにママは春樹さんと新婚生活が送れるんだから」


娘に明るく言う。



「ママ……」


涙をいっぱい溜めている娘に手を延ばし自分の胸に抱き寄せた。



「雪哉君に迷惑をかけないようにね」


「……うん」


マンションから歩いて約15分の所にある雪哉のヘアーサロンへ2人は向かった。


この後、ママと春樹おじさんと私で夕食を食べる予定。


その前にマンションの鍵をゆきちゃんに返しに行く。



お店全体がガラスの印象のゆきちゃんのヘアーサロンの本店。


ゆきちゃんは他の店舗にもよく行くらしいけど、ここにいる方が多い。


都会的でおしゃれな2階建ての建物の中へ入ると


「「「いらしゃいませ」」」


明るい声が響いた。



受付カウンターも広く、おしゃれな女性が並んでお客様を接客中だ。



その中の1人、私の髪をいつも切ってくれているめぐみさんがカウンターの中から出てきた。


めぐみさんは本店のマネージャー兼ヘアースタイリスト。


ゆきちゃんの学生時代からの友人と聞いている。


「こんにちは 西山様 杏梨ちゃん」


「こんにちは めぐみさん 雪哉君を呼んでくれるかしら?」


「はい おかけになってお待ち下さい」


笑みを浮かべ2人に頭を下げると2階へ続く幅広のらせん階段を上がって行った。


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