ダンデライオン~春、キミに恋をする~
Season1 蒲公英を探して

・たんぽぽをつけた王子様



緩やかな坂道。

その道を覆うように、桜並木が続いてる。


満開の桜が、春風に乗ってその花弁をヒラヒラ飛ばす。



――4月。


あたし、間宮椎菜(まみやしいな)は、桜をのんびり見ることもなくただひたすら呆然としていた。




「……嘘でしょ」




ポツリとこぼれた言葉も、穏やかなピンクの風がどこかへ連れ去った。



今日から学校が始まると言うのに、あたし以外の生徒の姿はどこにも見当たらない。

それもそのはずだ。


時間は9時をまわろうとしてる。



「遅刻だよ……まじでありえない」



今日から高校2年生。
うちの学校は、1年と2年はクラス替えがあるんだ。



早く行って、クラス表を見るはずだったのに。



坂道の先に、小さく見える校舎。
そこまで駆け上がる体力が、あたしに備わってる自信は、今のところない。



あたし達の間では、桜坂、なんてロマンチックな名前で呼ばれてる。


またの名を、S坂。


もちろん、登りも下りも辛いって意味で。





「……はあ」



ため息をついたその時、ブレザーのポケットで携帯が震えた。




「もしも――…」

『ちょっと、シィ!? 今どこにいんのよっ』



< 1 / 364 >

この作品をシェア

pagetop