大空の唄

本物 -AYANE-

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「そ…ら…?」


目の前の状況を飲み込めないあたしは、倒れたまま起き上がることも出来ずに唖然とする


2人と別れたあと、ふと蒼空追跡を思い出したあたしは、まだ興奮が冷めず火照る体とテンションに任せて再び局内に入り、1人局内を物色した


さすが大和テレビ…


1人だからなのか、さっき3人で見たのとはまた違う独特の雰囲気と広さに改めて圧倒されながら、辺りをキョロキョロ見渡して進む


「いないだろうな…」


いたとしてもこんな広い中から1人を探し出すなんて…奇跡に近いだろう


そんな半分諦めに近い感情が沸き上がる


帰ろっかな…


しばらくうろうろしたあたしは興奮も冷め、自分がここにいることが場違いに思えてきた


それにだんだん自分が今どこに居るのか分からなくなって来ている


よし!帰ろう!


気が付くと人通りが少ない廊下を歩いていたあたしは、角を曲って見える廊下に蒼空らしき人どころか誰もいなかったのでそう思い、立ち止まる…


元来た道戻って行けば帰れるよね?


あたしはクルッと向きを変え、今曲がったばかりの道を再び曲がる


これが事件の始まりだとも知らずに…


ドンッ


「いったーい」


衝撃と共に身体が投げ出され地面に尻餅をつく


「すみません…」


"すみません…"その声になぜか聞き覚えがあるような、そんな気がしながらあたしはゆっくり顔を上げた


「そ…蒼空…?」


ねぇ。あの時もし違う道を選んでいたら…あたしは違う運命を歩んでいたのかな?

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