∫hiRo 〜雨の向こうで僕が思うこと〜

傷ついた僕

 

 次の日は何日かぶりに、やっと晴れた。

 いくら雨の日が嫌いじゃないといっても、こんなに家に閉じこもりっぱなしなのはさすがに辛い。


 僕は早速庭に出ると、隅から隅まで縦横無尽に駆け回った。


 庭に出たのは、僕だけじゃなかった。

 朝からご主人の奥さんが、桜の花のツボミを一つひとつ、とても丁寧に見ていた。

「桜のツボミ、落ちてないわ。よかったわぁ」


 家の庭には大きな桜の木があった。

 ご主人自慢の桜の木だった。


 ひとしきり遊んだ僕は、奥さんの足元に座り、その様子を見ていた。

 奥さんは僕を見て、

「まだまだツボミは固いわ。でも、桜の花が咲いたら宗ちゃんも1歳よ。本当に早いわねぇ」

と言った。


 僕は1歳なのか。

 ご主人はいつも奥さんに、「私はもうすぐ70歳なんだなぁ」と言っている。

 ご主人はやっぱり、すごい!



 僕は桜の花が咲く日が、ますます楽しみに思えるのだった。






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