眠れぬ夜は君のせい

├黒いあげは蝶

あれから、何年か経った。

章子と結婚し、子供を儲けた。

2年前に章子が静かにこの世を去り、子供も独立した。

「いい天気だな」

まぶしい太陽の光。

それに目を細めながら、庭の中を散歩する。

全てやることを片づけた俺は、静かに老後を過ごしている。

時々、思うことがある。

「彼女は…誰だったんだろうな」

揺れるような長い黒髪がキレイだった彼女。

覚えているのはたったそれだけで、後は何も覚えていない。
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