ショコラ~恋なんてあり得ない~

2 運命の出会い?

 うちの喫茶店は開店時間が遅く十一時だ。

もともとがパティシエの親父は、食事よりもデザートにこだわっている。
その為、デザート付ランチや、三時あたりのコーヒータイムに狙いを定めているのだ。

準備も大体整った十時半、従業員である高山 柾弘(たかやま まさひろ)、通称マサがやってきた。


「おはようございまーす。あれ、マスターどうしたんですか?」

「おお、マサ! 聞いてくれよ、ひどいんだ詩子ったら」

「うるさいわよ」


うざい父親はマサに泣きつく。
優しく背中を撫でたりしてんじゃないわよ、この甘党男。
横目であたしを見ながら二人で囁き合ってるさまは、むかつくことこの上ない。

足蹴りでも入れてやろうかと思うけど、さすがにスカートだからやめておこう。

不機嫌なまま開店準備は終わる。
今日は日曜日、客の入りもいいはずだ。気合を入れてエプロンを締めなおす。

ひとたび客が入れば、あたしは愛想笑いを貼り付けなければならない。

だって、所詮この世は金だもの。
儲からなきゃ生きていけないじゃないの。


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