御曹司の溺愛エスコート

空港

バスルームに入ってもメイクをする事もなく、ライトブラウンの髪の毛だけを梳かして部屋に戻った。


蒼真には会わずに帰るが、伯母には一言帰る事を言わなければと下へ降りた。


部屋でのろのろとしていたせいで、時刻は10時になっていた。
伯母はリビングルームで花を活けていた。


「伯母さま……」

「あら、どうしたの?」

「あの……急用を……思い出して……これから帰ります」


桜の言葉を聞いて伯母は楽しそうに笑った。


「そうなの? 本当かしら? 蒼真の婚約披露パーティーに出席する自信がないのではなくて?」


伯母に何を言われても桜はうつむいていた。


「あなたの苦しむ顔を見られなくて残念だわ。もうすでに見てはいるけど。蒼真はもうあなたの事などなんとも思っていないのよ。いい気味だわ。大事な望を殺した女に蒼真は渡さない」


伯母の言葉を聞いて桜の心はずたずたに傷ついた。


私が望君を殺した……。


桜は望を殺したと責められてうなだれた。
憎まれている事は知っていたが、自分の辛く悲しむ顔を見るためにアメリカから呼ばれたなんて……。


「お世話になりました」


桜は口を一文字に引き締めてからリビングルームを出た。



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