嘘婚―ウソコン―

*ただ、そう思ってる

8月を迎えた。

千広は自宅で昼寝した後、バイトに向かった。

今月でここを辞めた後は陽平の事務所で働くことになっている。

外に置いてある看板のプレートを『Close』から『Open』に返ると、千広は何気なく顔をあげた。

「あっ…」

声をあげたのも、無理はない。

陽平がこちらに向かって歩いてきていたからだ。

その隣には、いつか見た彼女もいた。

この間のようにサングラスがないから、今度は顔がわかっている。

予想通り、よく整った顔立ちをしていた。
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