君を探して

彼氏

その日の放課後、私は教室でチョコと話をしたあと、1人で部室へ向かった。

教室がある本館と渡り廊下で結ばれたL字型の別棟。
そのいちばん奥、突き当たりに吹奏楽部の部室はあった。


部室には、まだ誰も来ていなかった。

秋の学園祭を最後に3年生が引退してしまった上に、年が明けるまで行事もないから、部内はすっかり緊張の糸が切れていた。

本当ならこの時間には部室には人があふれ、いろんな楽器の音が鳴り響いているはずなのに。

「また、先生に怒られちゃうよ……」

教室では全くやる気のない滝田先生に──

自分の楽器や、譜面台、メトロノームを楽器棚から取り出しながら、私はため息をついた。


校舎の突き当たりにある部室の目の前には、グラウンドが広がっている。

私は、折りたたみ式のパイプ椅子をかかえて外に出た。
天気のいい日は、屋外で練習していた。

椅子を広げ、楽器の準備を終えると、大きく深呼吸して練習を始める。

校舎に背を向けて、マウスピースを咥え、何もさえぎるもののない空間に向かって音を出す。

自分の音が真っ直ぐに伸びていったときの気分といったら、もう、最高!!



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