失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】

不確かな拷問





ポタン…ポタン…

どこかで水滴の落ちる音がしてる



冷たくて湿ったコンクリートの床

薄暗い地下室の隅に敷かれた

薄汚れたマット

弱い蛍光灯が遠くでまたたいている



意識がはっきりしない

思考が際限なく

緩くほどけていく



視界がぼんやりしていて

焦点が定まらない



誰かが戻ってくる

「…効いてきたか?」

「…あぁ…う…ん」

「くく…可愛いな…クスリ効いてる

時のお前って…」


言われてることの意味を

頭で理解出来ない


でも

それでいい


「…して…よ」

「欲しいか」

「早…く」

「いやらしいな…欲しがって」

「はやく…して…」

早く埋めて欲しい

なんでもいい

早く

もっと

意識を失うまで









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