ルーズ・ショット ―ラスト6ヶ月の群像―
あと3ヶ月

1

 スローモーで 夢見がちな日々が
 突然 倍速になったんだ
 これが現実かと 妙に遠く感じるんだ


十二月に入って、ミツと洋二の住む木造アパートは隙間風が
びゅうびゅう入り、底冷えのする日が続いた。

サトシからの呼び出しで、ミツはファミレスへ向かう。
もう残り少ない街路樹の葉が冷たい風に吹かれて揺れて、
今にもちぎれそうだ。
ミツはマフラーを鼻まで引き上げて、背を丸くして足を速めた。

「いらっしゃいませ、こんばんは!何名さまですかぁ?」
暖かい店内では、半袖のウェイトレスが陽気な挨拶をする。
ミツはテーブルを見回して、手をふる裕太を見つける。
「ツレなんで。」
と、ぶっきらぼうにウェイトレスを遮り、メンバーのいるテーブルへ着く。

四人はもう数時間前からいるようで、
サトシの前の灰皿には数本のタバコの吸殻がある。
裕太はドリンクバーを制覇したかのようにいくつものグラスとカップを
ドラマーらしく並べている。

「お疲れさん。」
サトシが軽く挨拶し、席を詰めた。
ミツはマフラーを外しながらソファに座った。
洋二は不機嫌そうに目を伏せている。

「ミツ、なんか食べる?」
裕太がメニューを差し出す。
「ああ、ありがとう。まだ食ってなかったんだ。」
ミツはメニューを受け取り、ハンバーグセットライス大盛りを注文した。

「羽月ちゃん、この前言ってたDVDレンタル始まったよ。」
「あ、そうなんだ・・・。」
羽月は、ぎこちない笑顔をミツに向ける。
いつもと雰囲気の違うフラワー・オブ・ライフの四人の様子にミツは、
メンバーの顔を見渡した。
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