あやとり

目撃



学校からの帰り道、今日は千春と二人でCDを買いにいつもとは反対の市街地へ足を向けた。

そこから十分ほど歩いた先は、優ちゃんが暮らすアパートがある。

歩いて自分の職場まで通えるところを、彼女は住まいに選んでいた。

この辺には一応、オフィス街のような通りがあって、私の家の近隣とは違い、街路樹も歩道の造りもお洒落な感じだ。



千春と一緒にハンバーガーを食べた後、優ちゃんの携帯電話にメールを入れた。

二十分ほどしてから、私の携帯電話が鳴った。

「みぃちゃん、何時ごろ来るの?」

「優ちゃんが帰ってくるころにアパートに行くよ。何時に終わるの?」

「今日は少し遅くなっちゃうかも。明日じゃだめかな」

「今日がいい。優ちゃんとご飯食べるから夕食いらないって、お母さんにメール入れちゃったもの」

電話を通して、優ちゃんの小さなため息が聞こえてきた。

「わかったわ。なるべく早く帰るから。会社を出るときにまたかけるわ」

「はぁい」

切れた携帯電話に向かって肩を竦めてみせた。


< 30 / 212 >

この作品をシェア

pagetop