冬うらら~猫と起爆スイッチ~

11/30 Tue.-3

□20
「はっはっはー…お久しぶりですなぁ」

 ようやく締め直したネクタイ。

 触りたくもないバーコード親父と、無理矢理握手をさせられながら、カイトはハードメーカーとの打ち合わせに入った。

 他社の会議室というのは、勝手が分からない分、威圧感がある。

 しかも、周囲をワケの分からない肩書きを持つ、取引先の連中に囲まれていれば、なおのことだ。

 カイトは、目を半開きにしてそれを眺めた。

 どいつも、こいつもガン首揃えやがって。

 マヌケヅラを。

 口さがなくそう思った。

 機嫌がよろしくないので、なおのことだ。

「…顔が歪んでますよ」

 一緒に入ってきたシュウが、めざとく見つけて小さな声で囁いてくる。

 席につきながらも、カイトは助言を無視した。

 言われなくても分かっているし、それくらいの表情が、いまの場合ちょうどいいのだ。

 何しろ、ここは彼らにとっては敵地。

 たとえ条約が結ばれて友好国になろうとも、そんな条約も、いつまでもつか分かりもしない。

「さて…では始めましょうか」

 その言葉を聞いた後、目の前に山と積まれた資料にうんざりしながらも、カイトは社長の顔を倉庫から出してきたのだった。
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