四竜帝の大陸【青の大陸編】

11

離宮での生活も、あっという間に一ヶ月が経っていた。

『トリィ様、お勉強の時間は終わりですよ。お茶にいたしましょう』

その声に、私は本を閉じた。

『はい、カイユ。お茶、飲みます』

カイユさんは身の回りの世話をしてくれる侍女さんで、長身の美人さんです。
背は高く、190cmはあるんじゃないかな?
腰まで流れるさらさらの銀髪に、空色の瞳。
白人より黄色人種に近い肌の色。
顔つきも東洋人っぽくて、親近感が持てる。

だって、セシーさんやミー・メイちゃんは完璧な欧米系。
しかし、皆さん背が高い。
13歳のミー・メイちゃんだって、私よりずっと背が高い……。
16くらいかと思ってたのに、13歳。
13に見えないくらい、彼女は落ち着いていて大人っぽい少女だった。

カイユさんはこの国……セイフォンの人じゃなくて、帝都って所の出身。
帝都の人達はセイフォン人と違って<監視者>を怖がらないから、私の侍女さんに抜擢されたらしい。

本職は侍女じゃなく、帝都で公務員のようなお仕事に就いてる女性で……。
ダルド殿下の誕生会に上司の代理で出席してたってくらいだから、身分の高い人なのかもしれないけど。

『だいぶ上達しましたわね。この1ヶ月間、とても頑張って語学を学ばれましたものね。教えがいのある生徒に恵まれて、私も嬉しいですわ』

セシーさんは毎日のように、私に言葉を教えるため離宮に来てくれた。
本当に感謝です!
本職の語学教師は最初の3日間で16人が来て、全員アウトだった。

原因はハクちゃんだ。

男性教師は門前払い(よぼよぼのおじいさんでも)をし、離宮に入れない。
オネエ系も駄目。
オネエ系やゲイなら平気かもと、ミー・メイちゃんのパパが必死で探してきてくれたのに駄目だった。

女性教師はハクちゃんも文句は言わなかったけど……彼女達のほうが無理だった。
この国では教師は裕福な家柄の出身者が多く、お嬢様な女教師達はハクちゃんの前では震えたり、泣き出したり……腰を抜かした人もいた。
こうなることはある程度は予測されていたらしく次々に新しい教師が来て、去っていき(むしろ運び出され?)3日間で16人の候補者が総て消えた。

ダルド殿下、ごめんなさい。
せっかく集めてくれたのに。

こんな訳で、ハクちゃんを怖がらないセシーさんが私に言葉を教えてくれることになった。
彼女にはお世話になりっぱなしです……。 
 
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