惑溺

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「はぁ!?プロポーズぅ!?」




静かにジャズが流れる落ち着いた店内に、場違いなほど大きな博美の声が響いた。

「ちょ、ちょっと博美!声が大きい……!」

カウンターの隅に座っていた私は、隣で大声を出した博美の口を手で塞ぎながら、慌てて店の中にいる客を見回した。

「だって由佳!聡史さんと付き合って何ヶ月だっけ?」

そんな気遣いを完全に無視して、博美は口を塞いだ私の手を振り払い真剣な表情で私に詰め寄る。

「昨日で3か月……」

カウンターの上に広げた自分の赤い手帳。そこに規則正しく並ぶ数字の中で、昨日の日付をそっと指でなぞりながら言った。

「3か月でプロポーズって、いくらなんでも早すぎでしょ」

カチリ、と金色の華奢なライターを片手で操り、博美は煙草に火を付けながら呆れたように言う。



そんなの、私だって思う。
いくらなんでも早すぎる……
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