強引な次期社長の熱烈プロポーズ

２．その手に触れたら

＊

「神野さん昨日桜井さんと飲んだんでしょ？」

百合香は出社するなり坂谷に言われた。

「え？あ、はい」
「今度ある時はおれも呼んでよ」
「えっ…あの…」

百合香はまた硝子を拭く手が止まる。

坂谷は冗談ぽくは言っていたが返事を待つ限りでは内心本気なようだ。


「女子会、なんだろ」


困り果てたところに柳瀬がタイミングよくカウンターに来た。


「女子会？」
「昨日桜井がそう行ってたからな」

「そうなの？神野さん」
「あ！はい！すみません」


なんとかうまく坂谷から逃れられてほっとしたのも束の間、柳瀬の視線が痛い。


「神野さん、ちょっと」


そして百合香は柳瀬に呼ばれてバックヤードへとついていった。