マスカケ線に願いを

 広がる波紋



「あのね、ユズ」
「うん?」

 コウと話をした日、ユズの車の中で私は話を切り出した。

「この前、一緒に暮らさないかって言ってくれたのは嬉しいんだけどね」
「ああ」
「少しだけ、距離を置きたいなって思うの」

 私の言葉に、ユズは目を見開いた。

「……それって、遠回しに別れたいって意味?」
「違う! そんなんじゃない!」

 ユズの言葉に、私は力いっぱい首を横に振った。

「私、最近、自分の足で歩けてない気がして……」
「杏奈?」
「ユズに依存してて、私このままじゃ駄目になっちゃう。だから、自分を取り戻すまで、しばらく距離を置きたい」

 私がそう言い切ると、ユズがふっと微笑んだ。

「良かった」
「え?」
「いや、杏奈に捨てられたら、俺生きていけないからさ」

 ユズの言葉に、私は真っ赤になってしまう。

「……わがまま言ってごめんね。でも、自分を見直したいの」
「ああ、わかった」
「だから、今日は家に帰るね」

 私がそう言うと、ユズは傷ついたような顔をした。

「……何?」
「いや、それはほら、やっぱり寂しいだろ!」

 ユズの言葉に、私は微笑む。

「私も寂しいよ」

 私がそう言えば、ユズが面白いように真っ赤になる。
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