シーソーが揺れてる

「春ちゃんどこ行ってたの?」
夕方春香が部屋に戻るとすぐ甲高い広美の声が飛び込んできた。
「あー、ちょっとねえ」
「ちょっとねえじゃないよ。調子悪そうにしてたと思ったら突然居なくなってたからもしかして、春ちゃん・・・」
「おっおい馬鹿なこと考えるなよ、人聞きが悪い」
「馬鹿なこととは何よ!もう心配したんだから」
広美は目を潤ませた。
「まあ無理も無いか。病院で鬱の可能性ありと診断された人が急に居なくなったらそんな考え方してもおかしくないはなあ」
「春ちゃーん死なないでーっ」
涙目の広美は春香の肩にしがみついた。
「もう泣くなよ。まだ自殺は考えてないから。何にも言わないで出てっちゃって悪かった。ごめんね」
春香は広美の長い髪をなでながら言った。
「ほんと?」
広美の目が春香を大きく見上げる。
「うん、もちろん」
春香は真っ直ぐ広美を見て答えた。
「よかったー」
そう言うと広美はやっと春香の体から離れた。
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