シーソーが揺れてる

翌日春香が公園のベンチで一息ついてると、
「先輩、もう辞めてくださいよー」
遠くの方から知らない男性の声が聞こえてきた。
「いいからおれに任せとけって」
それに続いてこんどは耳馴染みのある声が近づいてきた。
「よっ」
ベンチにたどり着いた直人は春香の左側に腰を下ろすとその肩をぽんと叩いた。
「今日はずいぶん遅かったじゃない」
「そうか?」
春香はポケットから携帯を取り出すと時間を見た。
「私が早かったのか」
12時23分と記された文字盤を見て春香は携帯を閉じた。
「おいもっとこっち来いよ」
春香がポケットに携帯をしまっていると、直人が斜め左に視線を向けながら声をかけた。
「あれ?そちらの方は?」
直人に釣られたように春香は斜め左を見て尋ねた。そこには直人と同じ作業服を着た自分たちよりも少し年上と言う感じの男が恥ずかしそうな笑みを浮かべて立っていた。
「なに恥ずかしがってんだよ」
「えーっ?」
「さっきまでの元気はどこ行ったんだ?」
「あー」
直人に押されてその人は二人の真ん中にすっぽりとはまるように立ち止まった。
「どうも初めまして。片山良太と言います。よろしくおねがいします」
と力強く言った。
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