シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
その後

・忘却

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最近――

悪夢に魘(うな)されて、よく眠れない。



その悪夢は――

玲くんが…叔父さんである紫堂の現当主に跪いた日の夜から始まった。


多分――


あたしが目撃してしまった、人を食らう"蛆"と人の目玉を抉る"蝶"と…巨大化した蚕から出てくる寸前だった"何か"が、よっぽど深く…深層心理に刻み込まれていたんだと思う。


それ以上の"恐怖"なんて、あの場であたしが感じることなんてなかったし。


だけど見る悪夢は、別に奇怪で醜悪な化け物(クリーチャー)が出演するでもなく、あたしの他に出演者などない…至って真っ黒の世界。


闇。


闇。


闇。


何処までも漆黒色の…濃厚な闇。


払えども払えども、何処までもあたしの全身を…舐め回すように纏わり付いてくる。


まるで触手のように。


そして――

あたしの名前が呼ばれるんだ。



それは2つの声。



1つは泣いている子供の声。



――芹霞ちゃあああん。



もう1つは…深みがあって透明な声。



――芹霞。



その2つの声が聞こえた途端、あたしの身体が恐怖にガタガタ震える。


此処から…この声から、どうしても逃れなきゃならないと、何処かで自分が叫ぶんだ。

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