【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~

月の名を持つ狼





「……大丈夫か?」



「ハァッ…ハァッ…」



滅多に走ったりしないひ弱なあたしは慣れもしない全力疾走で、彼の目の前でへたりこんでいた。



「…ん。」



「……!」



彼が同じ目線に腰を落とし、当たり前のようにあたしの前に大きな手が差し出される。



戸惑いながらも、おずおずとその手の平に自分の手を重ねた。



――――グイ…ッ!!



「あ…!」



大きくて温かな手が、あたしを軽々と引き上げた。



近くで見る彼は、長身に二重の切れ長な黒い瞳が印象的で大人びた驚くほど綺麗な男の子だった。



だけど、



「軽。細いね、紫衣。」



「!」



…にっこり笑うと、やんちゃな子供みたいな雰囲気になる。



不思議な…人だ。










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