シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・漂流

◆◆◆


「ねえ芹霞ちゃん、カイカイ。私の…とっておきの秘密を教えてあげる」


黄色いワンピースを着たイチルちゃんはそう笑った。


芹霞ちゃんがイチルちゃんの前髪を切って、イチルちゃんのビー玉みたいな綺麗な青い瞳が目立つようになると、イチルちゃんは随分と明るく笑うようになった。


いつもいつも、遊ぶものは"王様ごっこ"。


必ずイチルちゃんが王様で、僕と芹霞ちゃんは"ドレイ"。


ドレイって何なのか判らないけれど、王様の言うことは絶対聞かないといけない人のことを言うみたいだ。


イチルちゃんが右を向けと言ったら、すぐ右に向かないといけないし、左を向けと言ったら、何をしていても左に向かないといけない。


イチルちゃんが「ワンワンを捕まえてきて」と言ったら、2人で何処かにいる犬を探し出してイチルちゃんに差し出すんだ。


最近、イチルちゃんは…ワンワンを捕まえてということが多くなったんだ。


沢山沢山捕まえたけれど…一体どうするんだろう。


そしてワンワンの首に縄をつけ、その状態でワンワンの口に何かの液体を飲ませるよう…王様は言うんだ。


その通りにしないと"ドレイ"の負けだっていうから、芹霞ちゃんと負けないように言われた通りにしたんだ。


僕ね、何か判っちゃった。


イチルちゃんって、ワンワンが苦手みたい。


だって絶対ワンワンに触ろうとしないんだもの。


何かを飲ませたら、くったりしてしまうワンワンにでさえ…イチルちゃんは近寄ろうとしないのに…バイバイする時は、その縄を引き摺るようにして…一緒に連れて帰るんだ。


毎回、毎回…。


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