シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・決意2 桜Side

 桜Side
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「では、行って参ります。


――緋狭様」



私は支度を終え、艶然と笑う緋狭様に頭を垂らした。


「身体はもう、大丈夫だな?」


それはいつもの緋狭様の笑みで。


あれから――

5日も時が経ってしまったらしい。


「はい、緋狭様。ありがとうございました。

これから…煌を探しに行きます」


私は…ずっと心に抱いていた決心を口にした。


私がすべきこと。

私しか出来ないこと。


それはまず…制裁者(アリス)などいう馬鹿げたものに勝手に戻り…五皇すら消息が掴めていない状況にあるあの馬鹿蜜柑を思い切りぶん殴ること。


私は…正直、怒り心頭だ。


純粋な…真紅色に染まった褐色の瞳。


櫂様をお守りする為に"わざと"制裁者(アリス)に戻ったというのならまだしも、その思いの欠片だけを私に見せて、私を伝達者(メッセンジャー)として利用するだけ利用して、流されて敵の手に落ちるなんて言語道断。


私の中には、煌の意思とは無関係に制裁者(アリス)化しただけの誘引作用が、あの場にあったなどという…甘すぎて優すぎる考えは毛頭ない。


それは偏に本人の気質の問題だ。


更には制裁者(アリス)化した途端に、倍速の速さと力。


気に食わないったらありゃしない。


恵まれた素質がそんなに即座に発動できるのなら、どうして今まで発動しなかった?


あの男が怠惰で馬鹿だから、の言葉に尽きる。


では制裁者(アリス)化した煌は?

馬鹿ではないのか?


馬鹿ではない煌というのも、それはそれで腹立たしい。


そう。

もう何から何まで、憤慨しているのだ、私は。

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