愛は満ちる月のように
第3章 心の扉

(1)恋人のように

「ねえ、ユウさん。これって似合う?」


美月は楽しそうな笑顔を向ける。

今日一日、いや、この二時間ほどで、同じセリフを何回聞いただろう。その都度「似合うよ」と悠は答えてきた。とはいえ、いい加減付き合うのも苦しくなってきて……。


「ごめん、ちょっとトイレ」


そう言って逃げ出す悠だった。



都心ほど品揃えがある訳ではない。だが、繁華街のデパートに行けば、聞き慣れたブランドショップは何軒か入っている。

悠も女性にねだられ、贈り物をすることぐらいはあった。

それと同じ感覚で美月を買い物に誘ったが……。


『上質なものと高価なものは違うのよ。もちろん、両方を合わせた高級なものもあるけど。普段着にそんなものは要らないわ』


あっさり断られた。

結果、マンションの裏手にある大型スーパーに行きたいと言われて付き合うことになり……。


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