ブルーブラック2

2.小さな願い



「ねぇね!隼人くんて覚えてる?野球一緒だった!」
『え?ああ、隼人?隼人がどうしたの』
「実は···今日からうちに研修に来てるんだよ!」
『え??姉ちゃんの店に?』


仕事が終わり、家までの道のりの途中に百合香はすぐに椿に電話をしていた。

智と同じ家に帰るわけだが、なかなか現実には一緒に帰ることなんか出来なくて、大抵百合香が先に帰宅してマンションで智を迎え入れるのだ。

それは他の社員の手前、というのもどこかである理由だが、結婚しているし特に問題があるわけではない。
実際の理由としては、店長になった智はやはりそれなりの仕事があるために、社員よりも若干遅くに帰社しているのだ。


「なんか大きくなっててびっくりしたよ!椿も今度会ってみたら」
『ああ、今度機会があればね』
「隼人くん、今でも“百合お姉さん”て呼んでくれるんだよ~」
『···仕事中でも?』


椿の質問に百合香は少し間を開け、宙を見上げて思い出してみる。


「うーん··そうだったかな」

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