いつか、眠りにつく日

1、

「まったく、お前ってやつは誰にでもホイホイついていきやがって」

「・・・ごめんなさい」

「大体、お前は自分の立場を分かってないんだ。未練解消がお前のやるべきたったひとつのことなんだ。それをすっかり忘れて、あんなあやしげな老人についていくなんて」

「・・・ごめんなさい」

 もう3日もこんなやり取りを繰り返している。

 ここは病院のそばにあるモデルルーム。そこにある寝室で私はあれからずっと寝込んでいる。竹本に吸い取られた精気を回復するのに時間がかかっているのだろう。最初の数日はまったく動けなかった身体も、今日はだいぶいい感じだ。

「ねえ、クロ。竹本さんは妖怪だったの?」
ベッドから起き上がろうとするが、やはり身体は言うことを聞かないようだ。

「だからお前はアホなんだ。妖怪なんて人間の作り出したモンだろーが。あれは人間が言うところの地縛霊っていうやつだ。未練解消に失敗したやつは最終的にああなるんだ」
腕を組んで見下ろしている。




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