プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ

(6)秘密の共有

 会食を終えた後、料亭から出て空港まで送ってもらおうというところ、市ヶ谷副社長のケータイが鳴った。

 待つこと五分もないくらいケータイの通話ボタンをオフにした後、彼は深くため息をついた。

「どうされましたか?」
「急遽なんだけどね、京都に来てくれないかっていう話なんだ」

「何かトラブルですか? ここから京都に行くなら……新幹線になりますよね」

「今夜一泊とって、君も付き合ってくれないか」

 一泊する、と聞いて、この間給湯室であったことを思い出してしまい、私はドキッとする。

「先方はどちらさまで?」
 ひとまず事情を窺うと、意外な名前を告げられた。

「ミシェルだよ」
「え?」

「彼女にも話していなかったからね。産休明けだろ? ロンドン支社長にハウエル氏がいったんで驚いていたんだろう。それから、“ペットセラピー”の御礼も言いたいって」

「ウィル! ですね」
「よく知っているね」

「実は、京都にデートに行きたいって言ってたことがあって、その時に私が数日預かったんです」

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