淫靡な蒼い月


きみが好きです。


まるで菖蒲のように慎ましく、凛とした、きみ。


なぜ、まだ若い貴女が、父の元へ嫁いできたのか。


「お母さん」と呼ぶにはあまりに僕と近く、だからといって「姉さん」とは言えない。


白い顔、唇に引かれた朱。


それは、誰のためですか……?


夜半に、廊下の先から微かに漏れ聞こえてくる、貴女の艷めいた声に、何度、髪をかきむしったろう。


何度、膝を抱え、胸をつぶしただろう。


凄まじいほどの嫉妬と、白い肌への究極の憧れ。


触れてみたい。


唇で、味わってみたい。


眩しいほど美しい瞳で、見つめないで。


微笑まないで。


僕は、子供でいられなくなる。


今夜、父はいない。


僕の足は、きみがいる浴室へと今、向かっている。


扉の向こうから聞こえる水しぶき。


きみの、香りがする。


菖蒲


そして僕の“勝負”


僕は、指をかけた。


菖蒲の泉へ今、飛び込む。


強奪でもいい。


必ず、歓喜に変えて見せる。


きみが、好きです。


どうか、今宵


今宵だけでもいい。


僕だけの貴女になってください。


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