淫靡な蒼い月

視線


感じる。


視られている。


彼に、ずっと……。


この家に嫁いでからずっと、感じていた“視線”。


血の繋がらない、夫よりも年の近い義理の息子。


彼の視線が“親子”のものではない事に気付いたのは、いつだっただろうか?


今夜、夫はいない。


彼と、二人きり。


……感じる。


あたしの中の熱が、燃えている。


彼を、待っている。


愛?


判らない。


けれど、身体は正直。


いつもより、熱いお湯で、身を清めている……。


ねぇ、あなた


あたしはここよ。


早くきて、あたしに触れて。


……あ。


彼が来るわ。


判る。


視線。


いつもその視線で、あたしを狂わせる……彼。


いけないことだとは判っている。


あたしは彼の“母”でいなくてはならない。


なのに……。


この先に待っているのは……愛情?


それとも、愛憎?


あたしが、いけないの?


判らない。


足音が近くなる。


肌が、敏感になってゆく。


浴室を満たす湯気はまるで、あたしの“業”。


扉の開く音に、肩が跳ねた。


そして、天井に揺らめく湯気の中、桶が水浸しの床に転がる音を……あたしは聞いた。


あたしをすっぽりと包む、熱い肌の温もりの、下で……。


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