女王様のため息
仮面の女王様

「おはよう。わざわざ来てもらってごめんね」

予想通り、玄関のドアを開けると海が立っていた。

朝から不機嫌な顔と投げやりな姿勢で、私をちらりと睨んでいる。

「あ、えっと、とにかく夕べのコンパはごめんね」

とりあえず、平身低頭、両手を目の前で合わせて謝ると、小さくため息を吐いた海は、私の頭をこづいて。

「せっかく極上のオトコを用意してたのに、お前また逃がしたぞ」

呆れたように顔をしかめた。

「そんなに極上のオトコを連れてきてくれてたんだ。え?海以上のいいオトコだったりしたの?」

からかうように笑うと、

「それはない。俺以上にいいオトコを探すのは無理。……だろ?」

さらっと真面目に言い放って、海はさっさと部屋に入っていった。

大学時代から住んでいるこの部屋に、海は何度も来ている。

泊まって帰る事もしょっちゅうだし、私以上にこの部屋のどこに何があるのかを知っているかもしれない。

今も、まっすぐ冷蔵庫を開けてアイスコーヒーを作って冷やしているピッチャーとグラスを手にリビングにやってきた。

「弁護士と将来の国会議員候補」

ラグに座り込んで、にやにやとする海が呟いた。

「え?弁護士……?」

「そう。それと芸能プロダクションの次期社長」

「は?」

「昨日俺が用意してやったオトコ」
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