《完》BLOODMOON~あやかしの花嫁~

一族の繁栄~花奏side~

都心とは思えない広大な緑陰の深い森に私たちの住む安倍家の邸宅はあった。



「失礼します…」



床に伏せた現・安倍家の当主のお祖母様を訊ねて襖を開ける。



「来たか…花奏」


「はい」


お祖母様は躰を起こして私を待っていた。

私とお祖母様とふたりっきり。



「こうして、花奏と話をするのは久しぶりじゃなぁ」


「はい」


久しぶりに間近で見るお祖母様は、よりいっそ、顔の皺を深くして、やせ細っていた。


幼い時は大きく見えたお祖母様の姿がとても小さく儚げに映る。



死期が近づいているそんな思いが過ぎった。


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