千の夜をあなたと【完】

8.三つ葉のペンダント




<side.イーヴ>



西日が窓越しに部屋の中に差し込んでくる。

イーヴは窓辺に置かれた机の前で化学の本を読んでいた。

イーヴは薬草学が得意ではあるが、実際に薬を作る際には化学や医学の知識も欠かせない。


「……?」


イーヴはふと顔を上げた。

見ると、夕陽の中を黒い影がこちらに向かって飛んでくる。

……鷹だ。

イーヴは立ち上がり、窓を開けた。

それは焦茶の羽根を持つ鷹で、イーヴが窓を開けて腕を差し出すとバサバサっと羽根を羽ばたかせて行儀よく腕に止まった。


「ご苦労だったな、エインセル」

「ピュイ~」


エインセルはイーヴがブラックストンから連れてきた鷹で、ブラックストンとの連絡や情報収集に使っている。

ちなみにエインセルは妖精の名前で『自分自身』という意味がある。


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