ふたつの背中を抱きしめた
2章 柏原柊と云う子

1.ひねくれた中学生





---------4月。


桜は満開の時期を迎え、華々しく生命力に溢れたその姿はまるで私の新しい門出を祝ってくれているみたいだった。


「今日から正規スタッフとして働かせて頂きます、櫻井真陽です。宜しくお願いします。」

出勤初日、私は朝のミーティングで皆の前でそう挨拶をした。

「櫻井さんは学生の頃からよくお手伝いに来てくれていたから知ってる人も多いと思うけど、改めてみんな宜しくね。」

代表の雉さんは揃ったスタッフのみんなに私をそう紹介してくれた。

見知った顔ばかりとは言え、初日と言うことでちょっと緊張していた私は
雉さんの人を和ませる力のあるその笑顔にふっと肩の力が抜けるのが分かった。

ここ、NPO法人『ぬくもりの手』が利用している建物は通称『ぬくもり園』と呼ばれていて、雉さんはスタッフからも子供からも「園長」と呼ばれていた。


ミーティングに集まったスタッフを、園長はざっと紹介してくれた。

ぬくもり園で働く正規スタッフ…つまり有資格者でお給料が貰える立場の人は、私と園長を抜かして五人。

後は「ぬくもりの手」の会員と、学生や一般のボランティアの人がサポートしてくれている。

今年、正規スタッフとして入ったのは私だけだったけれど、ボランティアには初めて見る顔の人が何人かいた。

集まったスタッフの名を次々と園長は紹介していき、最後に

「櫻井さんは初めて会うわね。柏原柊くん、18歳よ。この春からボランティアに来てくれるようになったの。」

そう言って、一番隅に立っていた男の子を紹介した。


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