ふたつの背中を抱きしめた

2.誰よりも不器用で





出勤二日目。


この日も柊くんはボランティアに来ていた。


今日の私は昨日より遅い11時出勤なのでミーティングは無し。

ロッカーで着替えを済ませスタッフルームに行くと、柊くんは誰もいない部屋でひとり色紙を切っていた。


「おはよう、柊くん。」


私の挨拶に、柊くんはもはやこちらをチラリとも見なかった。


まいったなぁ、昨日のアレで嫌われちゃったかな。


朝からちょっと寂しい気持ちになる。


私にこれっぽっちも興味を示さず無言で鋏を動かす柊くんの手には、昨日の色紙。


遊戯室に飾る桜、そういえばまだ全部作り終わってなかったっけ。

遊戯室の壁にはいつも四季折々の風景を模した色紙の花が飾ってある。

4月はもちろん桜。

でもいい加減仕上げ無くっちゃ本物の桜が散ってしまう。


私は今日の自分の業務をホワイトボードで確認し今の時間を事務作業に宛てて良い事を確認すると

「柊くん、私も手伝う。今日中にそれ完成させなくちゃね。」

そう柊くんに声をかけた。

そして、彼の机に積まれた色紙を半分持っていこうとした時、
私は柊くんの手元を見て目が点になった。


「…車…??」


桜を作るために用意されたピンクと葉っぱ用の緑の色紙は、
どういうワケか柊くんの鋏によって車の形に切り抜かれていた。


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