ふたつの背中を抱きしめた

2.逃げた猫






「ヤバい、真陽ちゃんのカレ、想像以上に素敵だった。」

リエさんが、興奮した面持ちで私の背中をペシペシ叩きながら言った。

今日は日曜日。私は仕事だけど綜司さんはお休み。

優しい優しい綜司さんは車で私を職場まで送り届けてくれた。

園門の前で降ろしてもらってる時に、ちょうど出勤して来たリエさんと鉢合わせたのだ。

礼儀正しい綜司さんは車から降りてリエさんに挨拶をした。

そのスマートな物腰に、リエさんがぽーっとなっているのが手に取るように分かった。

「良かったら今度うちに遊びに来て下さい。真陽がお世話になってるお礼に是非食事でも。ね、真陽。」

会話の最後に綜司さんはそう言ったので、私もそれに同意して頷いた。



「ねえ、さっきの。本気にしていい?真陽ちゃんち行ってみたいな。」

ロッカールームで一緒に着替えをしながらリエさんが言った。

「もちろん!頑張って休み合わせるから是非来てよ!料理のウデ奮うよー!」

私はリエさんに大袈裟に腕まくりをして見せた。

「真陽ちゃん料理得意なんだ?」

「うーん、おもてなし料理なら多少は鍛えられた感じかな。綜司さんの友達、よくウチに来てたから。」


そう。綜司さんは私に、よく友達を紹介してくれた。

会社の同僚、学生時代の友達、それ以外の知り合いも。

特に一緒に住むようになってからは私も自分の友達を招いたりして、綜司さんの友達と一緒にちょっとしたホームパーティーみたいな事もした。

私が働くようになってからは時間がとれず、とんとご無沙汰だったけど。

披露宴に呼ぶ友人を招いて予めおもてなしするのも良いかもしれない。

久々に頑張って時間作ろうかな。


私は愛用の手帳を括りながら思いを巡らせた。

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