結婚3年目の夢の実現と現実(改)
一度だけの交わりまで

彼と私

 私が主婦になった時点で彼の態度が変わった。

 職場の後輩として、今まで気兼ねなくエッチな冗談を言い合ったり、朝までメールしたり、電話したりしていた関係は突然、完全になくなった。

 思い出す。

 そういえば彼が

「不倫なんて絶対しませんよ、するだけ無駄」

という言葉を以前発していた記憶がある。

 それに対して私は、

「君、賢いね!」

と、大人ぶってみせたっけか。

 私の夫となった人は彼の上司に当たる。尚更だ。

 彼、吉永 樹 (よしなが いつき)は私より3つ年下の27歳。

 彼が22歳で入社し、23で私と同じ部に配属されてから、4年になる。

 最初はほとんどしゃべらなかったと思う。

 彼は、細身の長身でさらりとした黒髪に白い肌、切れ長の目と少しふっくらした唇が綺麗に整った顔をして、ただ歩いているだけでよく目立つ。

 それは人気にも表れ、入社してから幾人もの社内の女性と食事に行って、結局フっていたとか。

 その話は本人からも聞いたことがあるし、噂も随分出回っていた。

 そんな彼と仲良くなるきっかけになったのは、冷蔵庫のポッキーだ。
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