久遠の花〜 the story of blood~

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 六月も半ばになった頃。

 私は、真新しい制服に袖を通していた。

 久しぶりの登校だから、朝からウキウキしてしょうがない。

 入学式には参加したものの、それからまたすぐ入院を余儀なくされてしまって……今回長くならなかったのが、不幸中の幸いだと思う。



「――やっぱり可愛いなぁ」



 姿見鏡で全身をチェックすると、嬉しさのあまり、ついその場でくるりと回っていた。

 言っておくけど、可愛いって言葉は自分の容姿に対してじゃない。あくまでも、私が今着ている服――制服に対して発した言葉だ。

 白い服に、襟(えり)とスカートが水色のセーラーで、胸元には大きなリボン。学年ごとに色が違っていて、色は桜と緑と紫の三種類。

 一番人気は桜色で、運がいいことに、私は桜の年にあたった。

制服が可愛いからここを選んだってこともあるけど、一番の決め手は、“家から近い”ということだったりする。

 なんて適当な、と思う人もいるかもしれないけど、これにはちゃんとした理由がある。

 このままで行きたいけど……できないんだよね。

 もう一度じっくり鏡で姿を確認すると、黒いカーディガンを羽織り、一階に下りて行った。

 私が近くの高校、そしてこのまま行けないのは――肌が、赤くなるから。

 太陽に長時間さらされると、真っ赤になって熱を持ってしまう。

 人より肌が白いのもそのせいで、外に出る時は、日焼け止めと長袖は当たり前。今日みたいに日差しが強い日は、傘も必要となるほど。

 つまりは――健康上の理由からだ。



「忘れものはなし、っと」



 朝食を食べ終え、食器を流しに持って行く。最後に、薬をカバンに入れれば準備完了。


「私、そろそろ行くね」

「おや、もう行くのかい?」


 湯呑をテーブルに置くと、おじいちゃんはやわらかな笑みを浮かべた。
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