大地主と大魔女の娘

魔女と地主と客人

 
「ああ、そこの君」

 突然声を掛けられた。

 振り返ると、これまた見たことの無い男性がこちらを見下ろしていた。

 石柱に寄りかかるようにして、彼はこちらを眺めている。

(いつのまに?)

 中庭を眺める事に気を取られていて、まるで気配に気が付かなかった。

 金糸で刺繍された上着の襟元をゆったりと緩めて着崩しているが、一目で上等と解る身なりのよさだった。

 明るい日差しがより一層、この男性の金髪を軽やかなものに印象付けている。

 少しくせがある、ふわふわと空気をはらんでいる髪が風にさらわれる。

 コツコツと石床に当たる靴音すら、軽やかなステップのように聞えるから不思議だ。

 雨に濡れた葉っぱと同じくらい鮮やかな、明るい緑色の瞳に見つめられる。

「ふぅん」

 しげしげと見定められたが、よくある事なのであまり気にならない。

 確かにこの色合いは珍しい。

 私も、自分以外のこの色の持ち主を知らない。

「珍しい色合いだね」

 彼はさらりと言った。

 まるで「珍しい毛並の子犬が産まれたね」というのと同じ調子で。

「聞きしに勝る見事なカラス娘だ。何故こんな所に君がいるのかな?」

「私のほうが知りたいです」

「うわ! 口を利いた! 賢いんだな!」

「……。」

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