バイナリー・ハート

5.疑惑

 翌朝、ロイドはいつもと変わりなく、朝食を済ませると、挨拶のキスをして仕事に出かけた。

 朝食の後片付けと一階の掃除はランシュがしてくれるというので、結衣は開店までにケーキを作る事にした。

 いつもはこの時間に、後片付けと掃除洗濯をするので、そんな余裕はないのだが、ランシュが手伝ってくれると余裕ができる。

 結衣は二階に上がり、洗濯機をセットして掃除を始めた。
 掃除をしながら、ゆうべのロイドを思い浮かべる。

 ロイドは結衣にしがみついて、しばらくの間「愛してる」を繰り返し、やがてそのまま眠りについた。

 あんな風にロイドが結衣に縋るのは、結婚してからは初めてだ。

 思い返せば、王子が異世界に飛ばされたかもしれないと分かった時や、王子が見つかって結衣が日本に帰る前日など、いずれも心に大きな不安を抱えている時、ロイドは結衣に縋った。

 今回も何か不安を抱えているのだろう。
 けれど、結衣には話さない。

< 54 / 263 >

この作品をシェア

pagetop